老親を喜ばすことができたことは収穫でした。

私の苗字は少数派ですが、最近までそのことを強く意識することはありませんでした。 苗字が珍しいと、うっかり他の苗字に置き換えられたり、 いつまでたっても名前を正確に呼んでもらえないといった不快な事件に 見舞われたものですが、 そういうものだと受け流してきました。 また、法事や葬儀があると、親戚関係から自分たちの宗教は違うのではないかとか、 墓の家紋は少し違っているとか、一族の絆が 眼に見えてほころびを生じていることに 落胆する声が出ていたのですが、それも日にちが経ってしまえば忘れている始末でした。 ところが50歳にもなると、いつの間にか、我が子に何をしてやれたのかと 自問していることが多いことに気づくようになりました。 たとえば、我が子に私の父のことは話すことができても、 祖父のことはほとんどわからないありさまです。 昔は一般的に兄弟が多かったので、祖父にも兄弟がいたはずですが、 その家族がどこに住んでいるのかもわかりません。 祖父は、父がまだ幼少の頃に亡くなりました。 父は祖父のことを わずかに憶えている程度でしたから、 私が何も知らないのは当然 といえば当然です。 そういう状態ですから、苗字発祥のことを知る由もありませんでした。 それでも、苗字の珍しさを否応無く意識させられる「ちょっとした事件」が我が子に降りかかると、 私は我が子に対して説明責任 があるような気持ちにさせられるのでした。 そんな折、家系図に興味を持ちました。家系図をつくれば先祖代々 のことが分かりやすく説明できるようになります。 でも、家系図 作成は、どこまで遡れるかやってみないとわからないという代物 です。 それに、おいそれと苗字の発祥まで遡れるわけでもありません。 費用をかけても家系図を作成するのか、しばらく踏み切れずにいました。 それでも、やはり老親のことを思うと、 今着手すれば私 が後悔しないですむという結論に至りました。 家系図は、4家系の作成を依頼しました。 結果は、おおむね江戸末期まで遡りました。 和綴じの家系図は家宝とし、自宅で保管しています。 ファイル式家系図は両親に2家系ずつをプレゼントしました。 両親には、以前から「費用がかかるんだろう。大丈夫か。」 と心配されていたのですが、家系図を渡すとすっかり安心してとても 大事そうに見ていました。 時折、私が実家へ帰ると、「そういえば、こういうことがあった んだよ」 と昔話をしてくれるようになり、話題は尽きません。 そもそも私が家系図を注文したことを知った父は 「昔のことを聞 かれてもどんどん忘れる一方で、何も思い出せない」ときっぱり 言っていたのですが、幼少の頃の出来事を急に思い出したからと 恥ずかしそうに話してくれるとは思いもよりませんでした。 家系図は高齢者の脳のトレーニングにはもってこいなのかもしれ ません。 苗字の発祥までを辿れる家系図をつくるのは夢ですが、 とりあえず我が子への説明責任を果たすツールが整ったことや、 老親を喜ばすことができたことは収穫でした。 このたびは、いろいろお世話になりまして、ありがとうございました。 【No.209】東京都 小金井市 SD様(10.6.9)  41番正絹緞子家系図1冊パック(4家系)
更新:2014年05月01日